我がクラブは、これまで多くの財団親善奨学生の支援をしている。日本の優秀な学生に海外の大学、大学院留学の機会を与える制度である。2008年度は、京都大学大学院の学生のフランス・パリ第4大学(ソルボンヌ大学)大学院での研究活動を支援した。
宝塚武庫川ロータリークラブの元ロータリ財団親善奨学生(2007~2008年)で、医師の岩野仁香さんが、NYの小児科プログラムのポジションを得ることができ、6月初旬から渡米する報告を行いに、例会に参加してくれました。彼女は念願の夢に向かって着実にがんばっています。
ロータリー財団奨学生 津田祐可子さん(2008~2009年、京都大学大学院、フランスパリ第4大学、ソルボンヌ大学大学院)の近況が届きました。あわせて、現職の大使館の大阪講演会のイベントの告知もお知らせします。(金岡)2011.10.21
宝塚武庫川ロータリークラブの皆様
さわやかな季節となりましたが、皆様におかれましては健やかにお過ごしのことと拝察致します。皆様には2008–2009年度の国際親善奨学生としてご支援を賜り、また帰国後も様々な活動を通してロータリーの環にいれて下さり、私の生涯に渡って貴重な経験をさせて頂きましたことに、心から感謝申し上げます。
その後、例会でご披露頂いたことと存じておりますが、皆様のご支援のおかげで無事に大学院を卒業することができました。現在、駐日トーゴ共和国大使館に勤めて8ヶ月経ちます。トーゴ共和国は西アフリカに位置するフランスの元植民地の国です。秘書としてフランス語、英語、日本語を使って仕事を行い、日本とトーゴ共和国の関係を深めるために尽力しています。 日本と世界中との交流を深めて、国際社会に貢献したいという志は、国際親善奨学生としての留学経験を通して一層強くなりました。ですので、このように夢に向かって一歩踏み出すことができたのも、ロータリー財団の国際親善奨学生プログラムに背中を押して頂き、そしてクラブの皆様が支えて下さったからだと思っております。
社会人として1年目なので、学生の時とは異なった苦労もあります。職員数が少ないのでなかなかお休みがとれず挫けそうな気持ちになったこともあります。しかし、そのような時には初志を思い出し、皆様のおかげで夢を形にする過程にいることを思うと、感謝の気持ちと情熱が湧いてきて、頑張ることができます。
トーゴ共和国大使館は、昨年10月に日本に初めて開設されたばかりの新しい大使館です。今年の6月にはフォール・ニャシンベ・トーゴ共和国大統領が震災に見舞われたばかりの日本を慰問のために訪問致しました。大統領が天皇に謁見したシーン等はニュースでも放映されましたので、ご覧頂いた方もいらっしゃるかもしれません。このように現在、日本とトーゴの関係は深化してきていますが、多くの日本人にとってトーゴ共和国と言っても未だあまりイメージが浮かばないのが現状だと思います。そこで日本の皆様にトーゴについてより多く知って頂くために、大使館では学生グループの訪問を受け付けたり、講演会を開いて臨時代理大使がトーゴについてお話して、皆様との親睦を深めるといった活動もしています。
そこで、この度、11月5日(土)に関西で初めての講演会を開催することになりましたので、この場をお借りして皆様にご案内することをお赦し下さいませ。臨時代理大使が大阪に参りまして、トーゴの文化的魅力、社会、経済についてお話致しますので、よろしければ皆様にもご参加頂ければ大変光栄と存じご案内させて頂きました。臨時代理大使からの講演会をご案内するお手紙と、チラシ、会場までの地図を添付させて頂きましたので、よろしければご高覧下さい。お越しいただける場合は、トーゴ共和国大使館ウェブサイト (http://www.ambatogojapon.net/イベント.ws)からお申込み頂けます。是非お誘い合わせの上、ご光臨賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
仕事を通して私が感じたのは、トーゴは経済的には貧しい国ですが、人々の心がとても豊かであるということです。私の出会ったトーゴ人は、とても陽気で心の温かい方が多いと感じました。文化的にも多様で、面白いお祭りもたくさんあり、人々は歌や踊りを心から楽しんでいるようです。アフリカの伝統的衣装にも使われている「バザン」という美しい布についても知りました。しかし電気、ガス、飲料水、緊急時医療等が身近にない人も多いという現実にも直面しています。そこで日本のODA等の国際協力を必要としている国でもあります。世界中には、私たちが生活の中で当たり前のように享受しているものを、受ける事ができない人々がいます。逆に、私たちが彼らから学べることも多いと感じます。またアフリカの市場は拡大してきているので、希望もあります。日本との経済関係も促進されてきております。様々な側面においての二国間の交流が深まるように秘書として大使館の任務をサポートしていきたいと考えています。
これからも困難に遭うこともあるかもしれませんが、自分自身が人としてより自立して、社会人としても成長し、日本と世界中の国との架け橋としてお役に立てるように、初志を忘れず、皆様からのご支援への感謝を胸に、たゆまぬ努力を続けたいと思います。宝塚にはなかなか帰省する時間もとれないのが現状ですが、また機会がありましたら是非、皆様にご挨拶に伺わせて頂ければと思っております。長々と大変失礼致しました。今後ともご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。 末筆ながら、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。
敬具
記
日時 平成23年11月5日(土)午後1時より
会場 PiaNPO6階大会議室 大阪市港区築港2丁目8-24
(大阪港駅4番出口より徒歩5分)
講演内容 「トーゴを知る―アフリカの笑顔―」
主催 駐日トーゴ共和国大使館
協力 特別非営利活動法人関西国際交流団体協議会
定員 100名
〔年 度〕 〔氏 名〕 〔最終学歴〕 〔留学先〕 〔カウンセラー〕
1989~1990
久次米康子 関西学院大学大学院 米国ワシントン大学 稲田尚之
1995~1996
北村元哉 大阪外国語大学 米国ジョンズ・ホプキンス大学大学院 竹田契一
1996~1997
伯井真紀 神戸女学院大学 米国ミシガン州立大学 稲田尚之
1998~1999
安富由希子 神戸女学院大学 英国ヨーク大学 勝山信房
1999~2000
赤坂仁子 大阪外国語大学 イタリヤ・ボローニャ大学 稲田尚之
2003~2004
藤井陽子 関西学院大学大学院 アメリカ・オハイオ州立大学 水谷重康
2005~2006
篠原泰子 関西学院大学大学院 米国カリフォルニア州立大学 岡本忠博
2007~2008
岩野仁香 関西医科大学在学 米国カリフォルニア大サイディエゴ校 岡本忠博
2008~2009
津田祐可子 京都大学大学院 フランス第4大学(ソルボンヌ大)平田敬二郎、金岡保之
本日のクラブ例会で、帰国報告の卓話を30分間行いました。研究はもとより、大学教員ストライキや生活でのトラブルを乗り越えて1年間のフランスでの留学生活を終えて無事帰国されました。留学中の様子をスライドを使っての詳細な説明があり、これからは日本とフランスの架け橋になりたいと力強いコメントがありました。(コメント:金岡)
こんばんは。津田祐可子です。おかげさまで一年間の留学を終えて、11月1日に無事、帰国しました。今日は早速、帰国報告のスピーチをする機会を与えていただきましたので、留学中の体験を、写真を交えて簡単にお話しさせていただこうと思います。どうぞ宜しくお願い致します。
現在私は、京都大学大学院の修士課程2年生になります。専攻は「共生文明学」です。日仏の文化交流に興味があり、研究テーマは「フランスにおける日本庭園の受容」です。宝塚武庫川ロータリークラブにご推薦いただきまして、国際ロータリー第2680地区の国際親善奨学生として、2008-2009年の一年間、パリに派遣されました。
派遣先は第1660地区で、クラブの名前はIssy-les-Moulineaux といいます。また教育機関は、エヴァンストン本部から第一希望をご指定頂きまして、一般にソルボンヌと呼ばれるパリ第四大学のMaster1という日本でいう修士課程の一年目に入りました。向こうでの専攻は美術史になります。
フランスでの留学生活について、主に4つのことについてお話したいと思います。まず、ロータリーとの関わり、次にパリでの日常生活、そして学業、インターンシップの経験についてお話します。
派遣されたIssy-les-Moulineaux というクラブは、同じIssy-les-Moulineaux という名前の街にあります。1986年に設立されたクラブで、現在メンバーは31名です。火曜日のお昼12時半から、レストランで昼食を食べながら例会を行っています。
例会では、この写真のようにお食事をしながら、社会問題などについて話し合われていました。私も、日本で準備していったスピーチを行って、宝塚武庫川クラブや宝塚についての紹介をしました。日本について興味をもって下さった方もいらっしゃり、後で質問して下さる方もありました。中には浮世絵をコレクションしていらっしゃる方もいました。また例会が行われているレストランでフランス料理を作られているシェフは日本人の方です。そして今年度の会長はカティア・ブラスさんで、女性の方です。このクラブでは、数年前に投票によって女性がメンバーになることが認められたそうです。現在は3人の女性メンバーがいらっしゃるそうですが、うまくいっているとのことでした。
奨学生には、派遣先クラブのロータリアンが一人、顧問カウンセラーとしてつくことになっています。私のカウンセラーさんは、パトリック・フージェロールさんという、今年度クラブの会計を担当されていらっしゃる方で、USBスティックを製造する会社の社長さんです。これはパトリックさんの事務所で、お互いのクラブのバナーを持って撮った写真です。クリスマス・イブにはご自宅にご招待頂いて、クリスマスの食事をご馳走になりました。フランスではクリスマスは家族と過ごすので、パトリックさんのご家族と暖かい時間が過ごせて感激しました。また源氏物語のフランス語訳が昨年出版されて講演会があるということで、一緒に行ったりもしました。また外国でひとり暮らしをする上で、日常生活で困ったことがあった時に、カウンセラーさんの存在は非常に心強いものでした。
また出来るだけロータリーの他の奨学生と交流する機会にも積極的に参加しました。まずパリに来てすぐに、フランスに派遣された奨学生対象のオリエンテーションがありました。奨学生は、日本人とアメリカ人が非常に多かったです。また今年の1月には週末にロンドンでヨーロッパに派遣された奨学生の会議があり、ロンドンの街を歩いて回ったり、奨学生の役目について話し合ったりしました。イギリスはもちろん、ハンガリーに送られた奨学生も多く来ていました。また2月には、フランスのシャンパーニュ地方にあるエペルネという街のクラブから招聘されました。それは翌年出発するフランス人の奨学生のオリエンテーションを兼ねていたので、フランスに派遣された奨学生とフランス人奨学生が交流することができました。日中はシャンペンを製造する倉を訪ねて、試飲もして、美味しかったです。またエヴァンストン本部の奨学生担当のコーディネーターの方もいらっしゃり、本部の方と実際にお会いできました。
また私は18歳から30歳までの若者向けのロータリーの活動の場である「ロータアクト」に時々参加していました。カウンセラーの息子さんが行っていらっしゃったParis-Bercy というクラブに行くことを勧められ、そのクラブの方と交流を深めました。月に二回、水曜日の夜7時半からバーで集まって話し合います。フランス語の練習にもなりました。メンバーは11名で、私のようなビジターも何人かいます。フランスの方だけでなく、例えばアフリカのカメルーンのロータアクトから来られた方ともお友達になりました。ロータアクトのメンバーや、ロータリーの他の奨学生の何人かとは、インターネットのネットワークを通して今でも繋がっています。
ロータアクトは、若者が奉仕活動をすることによって友情を育むことを目的としています。私が体験した具体的な活動としては、NGOと共同でゴスペルのコンサートを教会で開催したり、セーヌ川の船の中で劇を上演するといった企画をして、そのチケット代がNGOを通してアフリカやアジアの発展途上国に送られ、現地で図書館を作ったり、病院で役立てられるというものでした。このようにNGOとロータアクトが協力しあって、フランスの豊かな文化を生かして国際社会に貢献していて、素晴らしいと思いました。
次は、日常生活に関してお話します。パリでは一人暮らしをしていました。パリは「花の都」と言われますが、実際に住んでみると、そんな華やかなイメージとは異なった困難にも直面しました。私が今までに住んだことのある所とは異なった社会の中で生きる難しさも実感しました。第一に個人主義社会なので、何よりもまず自分の身を守らなくてはいけないということを痛感しました。またサービス大国日本とは対照的な社会なので、周りに期待をせずに、自分がしっかりしなくてはいけないと学びました。例えば銀行で手続きをしに行ったら、担当者とアポをとらないといけないと言われ、アポの日時に改めて来てみると担当者が休みでいなかった、また担当者は実は違う人だと言われアポを取り直さないといけないということもありました。バカンスも多いので、8月中は殆ど全てのお店が閉まってしまい、9月中は国立図書館も休暇になってしまいました。また部屋の洗面所のパイプが詰まった時に呼んだ排水管工が悪徳業者で、詐欺の訴訟を起こさなければいけないこともありました。洗面所を直す唯一の方法は洗面台を完全に取り替えることだと言われ、部屋に来てすぐ水道を止められてしまい、仕方なく工事を進めさせたところ、とても汚い工事で、圧力をかけらたり、威しのようなことも言われて、10万円近く請求されました。そこで事後に警察に行って相談をし、裁判所に詐欺の申し立てをしました。フランスでは裁判所は警察官の管轄なので、その後警察から呼ばれて事情聴取をして、半年ほどかかって結局全額賠償してもらうことができました。裁判所に被害を申し立てる手紙を書いた時には、ロータリアンの方がフランス語を校正してくださったり、助言をくださって、とても心強かったです。これもロータリーのおかげだと感謝しています。
パリでの生活でよかった点は、フランスは多民族国家なので、アフリカやユダヤの方など様々な人種の方とお友達になることができました。またやはりフランスの文化は素晴らしく、例えば街を散歩するだけで誰でも素晴らしい歴史的建造物が並ぶ町並みを楽しむことができますし、オペラ座のエトワールのバレエ公演でも10ユーロ(千円ちょっと)ぐらいから観ることができます。今でもやはりパリでの生活が恋しく感じるのは、パリで出会った友達との繋がりと、フランスの文化の魅力によるのだと思います。
学業に関しては、2008年9月はトゥールという町で、ロータリー本部から指定されたトゥーレーヌ・フランス語学院で語学研修を受けました。ホームステイで、フランス人のお婆さんのお家に、イタリア人の高校生と、フランス人の大学生の女の子と一緒に滞在しました。週末は、語学学校のフィールドとリップで古城巡りなどをしてフランス文化に触れて、大変充実した一ヶ月を過ごしました。
2008年10月からは、大学院の授業が始まるためパリに移りました。ソルボンヌでは、日本にいる間から連絡をとっていた指導教官が二人いたのですが、一人は大学の副学長さんで、もう一人は講演会などで忙しくされていて、セミナーがキャンセルされ、初めの半年間は連絡をとることもできませんでした。また後期には、教職員の大規模なストがあり、大学が封鎖されることもあって、結局、指導教官のセミナーは一年間で一度も行われませんでした。他の先生の授業をとって、必須のセミナーの単位を取得しました。研究に関しては自分でアーカイブや、関係者に連絡をしたり、他の教授に相談をしましたが、指導教官からの指導はなかなかしてもらえなかったので研究の方向が定まらず、修士論文は提出できませんでした。そこで今年度もパリ四大学に籍だけ残して、もし来年論文をフランス語で提出して口頭試問が通れば、向こうの大学の修士の学位をもらえるという可能性を残して帰国しました。
今年の5月からは3ヶ月間、パリにあるユネスコ本部の文化局無形文化遺産課でインターンシップの経験をさせていただきました。主に「無形文化遺産の未来」というユネスコと朝日新聞が共催のイベントの企画に関わりました。ユネスコでの仕事について知ることができ、また無形文化遺産に関して現在行われているユネスコの取り組みをリアルタイムで学ぶことができました。ユネスコの発行した「無形文化遺産条約」は特にアフリカやアジアなどの発展途上国の「生きた遺産」を守ることに焦点があたっているので、インターンを通して、自分の研究している日仏の文化交流だけではなく、発展途上国の文化を守るための試みに触れられました。
今後は就職を希望しているので、論文を執筆しつつ、お仕事を探したいと思っています。ロータリーのおかげで、日仏の架け橋になるきっかけを与えて頂いたので、この経験や、語学を生かした仕事に就きたいと思っています。また将来的には、日仏文化だけでなく、国境を超えて世界中の文化交流を促進することで平和構築の種を蒔くような仕事にいつか携わりたいという夢は持ち続けていきたいと思っています。
このように私の人生において非常に貴重な学びの場と経験を与えてくださったロータリーの皆様に、改めて深く感謝の意を述べたいと思います。ご支援、ありがとうございました。ただの留学ではなく、ロータリーの留学ができて、本当によかったです。ロータリーの素晴らしい活動に触れることができましたし、また国際親善奨学生として日本と世界との架け橋の一端を担うという指名を頂いたことは、留学を一層、有意義なものにしてくれました。今後ともどうぞご指導、ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。